Maison book girl 『Solitude HOTEL 4F』感想ブログ -ブクガの紡いだ仮想現実の世界

時間を忘れて没入する体験は誰にでもあると思います。

それは面白い小説を読んだり、アニメを見続けてしまったり、ソシャゲでクエスト消化に勤しんでいても起きることでしょう。

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*1

 

今回ブクガ(Maison book girlの通称)が作り出した世界は非常に没入が高い、ブクガワールドとも言える仮想現実*2であったように感じました。

そこでは時間も物質もすべて現実とは持って異なる何かで構成されていてとても楽しく、高い没入感と共に時を過ごすことができました。

ライブは非常に密度が高く、その情報量をすべてまとめることはできないので、自分が良いなと思ったポイントだけ抽出して挙げておこうと思います。

 

 

ライブの詳細について

ライブの詳細についてはこちらの記事にまとまっているので興味のある方には是非読んで見て下さい。

多分ブクガをわからない人には何を言っているか分からないし、知っていてもよく分からないかも知れません、だって参加した僕にすらよく分からないのですから。

natalie.mu

 

rooftop.cc

 

あと個人的にセトリをまとめて下さっている方もいます。

 

基本的にはモニターに映し出された時間が現実の時間からずれて巻き戻ったり進んだりして、舞台上ではその時間に合わせた演出が行われていたのだと思います。

 今回注目したい点は時間軸というどうやってもなかなか現実から切り離せない要素を見事に現実から引きはがしたより現実から切り離された、独立性の高い、別の世界を作ってみせたところにあると思います。

以下はサクライケンタがライブ会場を異世界にするために行ったと思われる演出をいくつかピックアップしてみました。

個人的お気に入りポイント① 体験を再現する手法

ライブの終盤、日付の表示がブクガがデビューした2014年の日付になってその時と同じ曲を同じ衣装で歌ったのですが、その際にはライトを演者に一切当てず、顔が全く見えない状態でした。

初めてブクガを見たときの観客の体験、誰だか分からないけど不思議な曲を歌うアイドルグループがいるぞって言う当時のオタク達の体験をなるべく再現させるために顔も分からなくする=誰だか分からない状態にする(厳密にはシルエットで判別可能ですが)演出だったのかなと思います。

 

個人的お気に入りポイント② MCパートは現実とリンクしてる間のみ

MCは序盤にちょっとだけありましたが、その時は時間が現実とまだリンクしていたときでした、つまり、その時点ではまだ四人は物質世界(=現実)の女性であったのだと思うのです。

だから現実の話もできるし年末という現実の時間軸の話をすることが可能だったのだと思います。

だからこそブクガワールドに世界が変わった後では、MCをはさんで、現実に戻るようなことはしなかったのでしょう、僕自身もブクガワールドには一個人としての矢川葵ちゃんも、井上唯さんも、和田輪さんもコショージさんも不要だと思ってます。そこにはきっと音楽と物語しかないのでしょう。

また、最初のMCタイミングで6時間でもライブをやるという話を冗談めいて話していましたがあれってもうこれから行くブクガワールドには時間の概念は崩壊するぞって言う予告だったのかも知れません。

 

個人的お気に入りポイント③ 時間を逆行させることで混乱させる手法

faithlessnessでの歌唱の停止、そして舞台の隅に置かれていた扉から光差すどこかへの移動(舞台からの退場、僕はこの瞬間、鳥肌が立ちました)、その後の14daysでの時間の流れの逆行*3

この辺りは解釈次第ですが、現実世界からブクガワールドへの移動が始まったのがこのタイミングで、この時にブクガワールドに移動して正しいライブが始まったと解釈するのが妥当かなと思います。

これ以降はもう全くなんだか分かりません。*4

とにかくそこでは時間軸が通用しない全く別の世界に移動したので現実世界での想像力しか持たない僕には解析不能なものなんでしょう。

 

個人的お気に入りポイント④ すでに肉体すら存在しないような演出

中盤、完全にブクガワールドに移行した後、彼女たちの衣装のせいでしょうか、レーザーが当たると衣装がチカチカと光ったように見えました、それはまるでゲーム内のポリゴンで作られたキャラクター達が光線銃を浴びるとそこのポリゴンデータが壊れるかのように見えました。(例えが分かりにくいのですが、電脳コイルという作品での仮想現実部分が点滅したりする演出に近いかなと思います。))

ここはブクガワールド、肉体というか物質はすでに存在しないよって演出に見えたのは考えすぎでしょうか

 個人的お気に入りポイント⑤ karmaの使い方が上手

www.youtube.com

こちらはkarmaという曲のMVですが基本的に都市の風景を車窓から覗いた風景が続くだけで、あまり面白みがないMVだなーと思っていたのですが、ライブではこの曲に合わせて表示されていた時間がどんどん遡っていく演出が行われました。

karmaのMVで見せた水平移動を時間軸の移動に錯覚させることでこのMVの効果を最大限に引き出していたように思いました。

 

個人的お気に入りポイント⑥ リアルワールドへの帰還

ライブが終わって時間が現実にリンクした後に映し出されたのは我々客席の姿でした。
ここで思い出したのは押井守Avalonという作品です。

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映画はゲームの中の現実も我々が現実と呼ぶ空間もどちらがリアルか分からない。

ゲームの中がリアルで現実と呼ばれる部分がゲームでもそこに何の不都合もないという話で、最後には「welcome to Avalon」 という表示がされ、観客にここはゲームなのかも?と問いかける終わらせ方をしています。

詳しくはWikipediaをご参照ください

アヴァロン (映画) - Wikipedia

 

最後に自分達が映し出された理由ははavalonのようにここがゲームか物質世界か?という問いかけではなく、きっと物質世界に回帰をさせるためのものでしょう。

昔ディズニーランドに詳しいオタクに聞いた話ですが、ディズニーランドには鏡というものがあまりないそうです。

その理由は、自分の顔をみて現実回帰せずに済むからだそうです。*5

逆に言うと、現実の自分達を客観的に見せたあの演出はここはもう皆さんが暮らす物質世界(現実)ですよ、もうブクガワールドはここにはありませんよということなんでしょう。

だからこそ、二度にわたるオタク達のアンコールにも応えなかったのでしょう。
ちょっと嫌みったらしい感じもしますが、全てはサクライケンタの手のひらの上ということでしょうね。

まとめ

ブクガの魅力はその圧倒的なサクライケンタワールドに没入出来ることだと感じました。

例えるならsound horizonなんかが近いと思いました。

あれはRevoという一人のオタクが創りあげた音楽と物語の世界に没入させるために徹底した作り込みと密度と演出を行います。そういったものに近いのかなと感じました。

映画やドラマといった映像の世紀が終わり、すでに人々の渇望は体験へ向かっているのというのは現代社会の常識ですが、その人々が求める渇望を2000円払って女の子とチェキを取ることから、サクライケンタ世界体験旅行ツアーに持ってきたことはブクガの大いなる成果のように思いました。

ブクガはアイドルにカテゴライズされていますが。

一般的にアイドルと聴いてみんなが思い浮かべるもの、例えば、可愛らしい衣装で揃えた女の子達が恋の歌を歌うのを周りのオタク達が大声を張り上げて盛り上げるようなものではなく、むしろチームラボが作る体験型現代アートの方が近いんじゃないかと思いました。

 

もしこのブログを読んでブクガに興味を持たれた方がいらっしゃったら、アイドルに行くという感覚よりはディズニーランドに行くとか4DX映画を見に行く方が感覚としては近いと思います。

でも所詮アイドルでしょ?などと思わずに観劇する気持ちで是非参加して欲しいなと思いました!

 

6月23日にはきっとなにかがありそうなので是非とも参加しようと思います。

 

最後になりますが、終演後ロビーにばらまかれていた紙のギリシャ語部分だけ解析してくれたオタクがいるのでそちらに興味のある方はご覧下さい(筆者は能力の都合でこの件についてはオミットしました)

 

s-mar31.hatenablog.com

 

 

 

 

*1:画像はサクライケンタ氏のツイートhttps://twitter.com/sakuraikenta/status/946385165495910400より拝借

*2:仮想現実という単語はVirtualRearltyと訳されるが、これは誤訳で本来の意味ではほとんど現実と同じというのが正しい意味ではあるが、VR開発の世界においては仮想現実と誤って訳されたことでむしろ日本では独特の世界が作られるようになったという意見がある・・・のだが肝心の一次ソースを見失ってしまった

*3:ナレーションではn日前というアナウンスと共に時間が1日ずつ遡っていったがこれは明らかに時間の流れに逆行するようにできている。 n日前を1月1日とするなら、n-1日前は1月2日になるはずであるが、n-1日前を12月31日とするような演出がなされていた

*4:筆者は2週目のライブが始まったとき、どうしたら良いか分からず呆然とライブを見つめていました、きっと異世界に来たことでの混乱と、もしかしたら身体がまだブクガワールドに来ていなかったからかもしれません。

*5:アイドルオタクの人もチェキ帖に移ったアイドルさんの姿を拝見して満面のオタクスマイルになった直後に隣に映る汚物を見て嘔吐(比喩)した経験があると思います。少なくとも僕はそうでした